SIer・ソフトウェア
IT・通信・メディア・エンタメの業界・13社:オービック・都築電気・TKC・JFEシステムズ・NSD・ゼンリン・クレスコ・テクマトリックス・DTS・日本ビジネスシステムズ・ラクス・SHIFT・システナ
この業界の稼ぎ方の基本
- SIerやソフトウェアの会社には、顧客ごとにシステムを受託開発する会社(DTS、NSD、クレスコなど)、自社製品を売る会社(オービックのOBIC7、ラクスの楽楽シリーズ、TKC)、テストなど特定の工程に特化する会社(SHIFT)、親会社のシステム部門から生まれた会社(JFEシステムズ)などがあります。
- 受託開発は人数と単価で売上が決まりやすく、自社製品・クラウドは一度つくれば継続課金で稼げるため、利益率に大きな差が出ます。
- IT人材の確保は、ほぼすべての会社がリスクの上位に挙げています。
会社を見分ける軸
- 利益率は同じ種類の利益で比べる:経常利益ではオービック約77.5%、ラクス約28.9%、TKC約19.9%、システナ約17.1%、NSD約16.4%、DTS約12.5%、SHIFT約11.7%、JFEシステムズ約11.2%、クレスコ約10.8%、都築電気約8.0%、ゼンリン約6.0%、日本ビジネスシステムズ約4.3%です。テクマトリックスは税引前利益で約11.0%です。
- 受託か、自社製品か:オービックは自社開発のOBIC7を直接販売し、売上の半分以上が導入後のシステムサポートです。ラクスは売上の約86%がクラウド事業です。一方、日本ビジネスシステムズは売上の約71%が利益率約2%のライセンス販売です。
- 顧客はどこか:TKCは会計事務所と自治体、NSDは金融機関、JFEシステムズはJFEグループと一般企業、ゼンリンはカーナビ・地図を使う企業が主な顧客です。
各社はどんな会社か
オービックは、企業の会計・人事・販売などを一つにまとめる統合基幹業務システム「OBIC7シリーズ」を自社で開発し、直接販売から導入・保守までを手がける会社です。1968年に会計機などの事務機器を売る大阪ビジネスとして大阪で設立されました。
尖ったところ自社開発の基幹業務システム「OBIC7シリーズ」を代理店を通さずに直接売り、運用・保守まで続けて支えるモデルで、経常利益の割合は約77.5%と、この図鑑のIT企業の中でも突出しています。売上の半分以上が、導入後のシステムサポートです。
SHIFTは、ソフトウェアのテスト・品質保証を中心に、開発やコンサルティングも手がける会社です。2005年に東京・渋谷で製造業向けのコンサルティング会社として設立され、2009年にソフトウェアテスト事業を始めました。
尖ったところ開発者が自分で行うことが多かったソフトウェアのテストを標準化し、独自の「CAT検定」でIT未経験者も含めて人材を採用できる仕組みにした会社です。合言葉は「すべてのソフトウェアにMade in Japanの品質を」です。
DTSは、システムの設計・開発・運用・保守や、ITインフラの構築・運用などを手がける独立系の情報サービス会社です。1972年にソフトウェア開発とコンピュータシステムの運営管理を受託する会社として設立されました。
尖ったところ親会社を持たない独立系の情報サービス会社で、業界特化のシステム開発から、ITインフラの運用・監視まで幅広く手がけます。中期経営計画では、ROE18%以上という高い資本効率の目標を掲げています。
NSDは、銀行・保険・証券などの金融機関や、製造業、通信・電力などの企業・公共団体向けにソフトウェアを開発する独立系のシステム開発会社です。1969年に大阪で日本システムディベロップメントとして設立されました。
尖ったところ銀行・保険・証券向けを中心とする独立系のシステム開発会社で、長い取引関係から「IT業界のなかでも高い利益率、厚い自己資本」を築いたとしています。子会社のNSD AIテクノロジーでは、大手企業とパートナーシップを組んでAIの研究開発に取り組んでいます。
システナは、自動車業界向けのエンジニアリング、通信・ネットサービスの開発・検証支援、金融・公共の基幹システム開発、ITアウトソーシング、IT機器の販売などを手がける会社です。1983年に横浜でマイクロコンピューターのソフト開発会社として設立され、2010年にカテナと合併しました。
尖ったところ携帯端末のソフト開発から出発し、今は完成車メーカー向けのエンジニアリングを行う次世代モビリティ事業が、利益率約43%と最も稼ぐ事業になっています。運用・ヘルプデスクからIT機器の販売まで、多くの事業を一社で持っています。
TKCは、税理士・公認会計士の会計事務所と、市区町村などの地方公共団体に向けて、クラウドの情報処理サービスやソフトウェアを提供する会社です。1966年に、会計事務所の職域防衛と地方公共団体の行政効率向上のための計算センターとして、栃木県宇都宮市で設立されました。
尖ったところ税理士・公認会計士約1万1,600名のTKC全国会と組み、会計事務所を通じて中小企業の会計を支える独自のモデルを持つ会社です。会員事務所が関与する企業の57.0%が黒字決算だとしています。
テクマトリックスは、ネットワークやサイバーセキュリティなどのIT基盤の製品・サービスと、コンタクトセンター向けシステムなどのアプリケーション、医用画像の管理システムを提供する会社です。1984年にニチメン(今の双日)の戦略子会社、ニチメンデータシステムとして設立されました。
尖ったところ北米を中心に将来性のある製品を見極める「目利き力」を強みにし、先端のセキュリティ製品の販売に加えて、導入後の運用・監視まで自社サービスで提供しています。医用画像のクラウドや学校向けの校務支援システムも持っています。
ラクスは、経費精算システム「楽楽精算」や帳票発行システム「楽楽明細」など、中小企業などの業務を効率化するクラウドサービスを自社で企画・開発・運用する会社です。ITエンジニアの派遣も行っています。2000年に大阪でアイティーブーストとして設立されました。
尖ったところ「楽楽精算」「楽楽明細」など、ITに不慣れな人でもマニュアルなしで使えることを理想にしたクラウドサービスを月額で提供し、売上の約86%をクラウド事業で稼いでいます。クラウド事業の利益率は約31%です。
クレスコは、企業・金融機関向けのシステム開発、組込みシステム、クラウドやAIなどのデジタルソリューションを手がける独立系のIT企業です。1988年にテクトロンとメディアリサーチが合併して東京で設立されました。
尖ったところ企業・金融・製造(組込み)の3分野にほぼ均等に事業を持つ独立系のIT企業で、M&Aで子会社を広げてきました。受託型から、顧客の「戦略パートナー」になる共創型のモデルへの転換を掲げています。
JFEシステムズは、JFEスチールなどJFEグループ向けのシステムと、製造・流通・金融など幅広い業界の業務システムを開発し、ERPや電子帳票などの自社プロダクトも持つ会社です。1983年に川崎製鉄のシステム開発会社、川鉄システム開発として設立されました。
尖ったところ川崎製鉄の情報システム部門から生まれた鉄鋼メーカー系のIT企業で、製鉄所という大規模な現場のシステムを担ってきた実績を、製造・流通・金融など外部の顧客に広げています。
日本ビジネスシステムズ(JBS)は、マイクロソフトのクラウドを中心に、企業のクラウド導入の計画から構築、運用、ライセンスの提供までを一貫して手がける独立系のクラウドインテグレーターです。1990年に東京で設立されました。
尖ったところマイクロソフトのパートナー・オブ・ザ・イヤーを12年連続で受賞した、マイクロソフトのクラウドに強い独立系のクラウドインテグレーターです。M365のライセンス提供をきっかけに大企業との取引を広げてきました。
都築電気は、企業向けの情報システムとネットワークを、機器の販売から設計・開発・構築、運用・保守、クラウドの月額サービスまで一貫して提供する会社です。1932年に電話交換装置の販売・工事・保守を行う都築商店として名古屋で創立されました。
尖ったところ電話交換装置の会社として1932年に創立し、今はソフトウェア開発からネットワークの構築・運用まで一貫して提供する会社に変わりました。電子デバイス事業を切り離し、情報・通信の事業に絞り込んでいます。
ゼンリンは、住宅地図や、カーナビゲーション用・スマートフォン向け・インターネット向けの地図データなど、地図と位置情報のサービスを提供する会社です。北九州市の善隣が前身で、1974年に住宅地図などの出版会社として設立されました。
尖ったところ紙の住宅地図から出発し、いち早く地図をデータベース化して、カーナビ用データでトップシェアを獲得した会社です。今は自動運転などに向けた三次元を含む「現実世界の再現」に取り組んでいます。
2社ずつ詳しく比べる
付録:数字で比べる
ひと目でわかる違い
- 30歳換算年収が最も高いのはオービック(約995万円)。
- 残業が最も少ないのはクレスコ(月4.4時間)。
- 有給取得率が最も高いのは都築電気(88.7%)。
- 売上の伸びが最も大きいのはラクス(2.92倍)。
| オービック | 都築電気 | TKC | JFEシステムズ | NSD | ゼンリン | クレスコ | テクマトリックス | DTS | 日本ビジネスシステムズ | ラクス | SHIFT | システナ |
|---|
| 働きやすさの点数 | 81.7点(S) | 78.7点(S) | 76.5点(S) | 68.6点(A+) | 63.3点(A-) | 63.3点(A-) | 58.6点(B) | 58.3点(B) | 56.5点(B) | 53点(B) | 50.1点(B) | 49.9点(C) | 47.9点(C) |
| 平均年収 | 1,129万円(35.8歳) | 940万円(43.2歳) | 921万円(40.3歳) | 861万円(44.1歳) | 751万円(39.2歳) | 601万円(47.1歳) | 671万円(37.2歳) | 846万円(38歳) | 659万円(39.7歳) | 642万円(35.4歳) | 665万円(32.7歳) | 685万円(38歳) | 519万円(31.2歳) |
| 30歳換算年収 | 約995万円 | 約705万円 | 約736万円 | 約633万円 | 約615万円 | 約414万円 | 約574万円 | 約711万円 | 約534万円 | 約571万円 | 約627万円 | 約576万円 | 約506万円 |
| 月の平均残業 | 未公表 | 6.6時間 | 未公表 | 22.6時間 | 17.8時間 | 6時間 | 4.4時間 | 未公表 | 22.1時間 | 8.8時間 | 未公表 | 未公表 | 9.7時間 |
| 有給取得率 | 未公表 | 88.7% | 未公表 | 79% | 74.3% | 未公表 | 未公表 | 未公表 | 未公表 | 未公表 | 未公表 | 未公表 | 未公表 |
| 平均勤続年数 | 12.9年 | 23.1年 | 17.1年 | 16.4年 | 13.3年 | 17.2年 | 10.2年 | 8.5年 | 15.1年 | 7.1年 | 3.2年 | 3.2年 | 6年 |
| 売上高 | 1,352億円 | 1,037億円 | 835億円 | 574億円 | 1,178億円 | 643億円 | 647億円 | 717億円 | 1,352億円 | 1,726億円 | 603億円 | 1,298億円 | 944億円 |
| 売上に対する利益の割合 | 77.5%(経常利益) | 8.0%(経常利益) | 19.9%(経常利益) | 11.2%(経常利益) | 16.4%(経常利益) | 6.0%(経常利益) | 10.8%(経常利益) | 11.0%(税引前利益) | 12.5%(経常利益) | 4.3%(経常利益) | 28.9%(経常利益) | 11.7%(経常利益) | 17.1%(経常利益) |
| 売上の4年の伸び | 1.51倍 | 0.87倍 | 1.26倍 | 1.14倍 | 1.65倍 | 1.09倍 | 1.46倍 | 1.96倍 | 1.43倍 | — | 2.92倍 | 2.82倍 | 1.45倍 |
| 従業員数(単体) | 2,030人 | 1,161人 | 2,458人 | 1,600人 | 3,305人 | 2,441人 | 1,498人 | 666人 | 3,199人 | 2,759人 | 2,190人 | 6,201人 | 3,856人 |
点数・年収・残業・有休・勤続は女性の活躍推進企業データベースと有価証券報告書、売上・利益・従業員数は有価証券報告書(EDINET)から。30歳換算年収は平均年齢の違う会社を比べるための目安(平均年収÷1.022^(平均年齢−30))。持株会社は本社の少人数の数字なので、事業会社と並べるときは注意。