コンサルの仕事がゼロからわかるガイド

はじめての人のための・その1

コンサルの仕事の基本とキャリア

コンサルタントは、会社や官公庁の「⁠困りごと」を一緒に解決する仕事です。このページでは、コンサルが何をするのかを、「⁠何を手伝うか(⁠ソリューション)」と「⁠どの業界を手伝うか(⁠インダストリー)」に分けて、実際の案件の例とあわせて説明します。最後に、入社後とその先のキャリアもまとめています。

コンサルの仕事の基本

だれの仕事を手伝うのか
主なお客さま(⁠クライアント)は、大企業や中堅企業、官公庁・自治体です。社長や役員、部長などの依頼を受けて仕事をします。
何を手伝うのか
「⁠新しい事業を始めたい」「⁠仕事のムダを減らしたい」「⁠古いシステムを入れ替えたい」「⁠会社を買収したい」など、お客さまが自分たちだけでは解決しにくい課題を手伝います。
どう進めるのか
数人から数十人のチームで、数か月から数年の「⁠プロジェクト」として進めます。課題を整理し、調べて、解決策を考え、実行まで支えます。
何を作るのか
経営会議で使う報告資料、新しい業務のやり方の設計書、システムの要件書、計画表などです。プロジェクトによっては、お客さまと一緒に現場で実行まで行います。
何で稼いでいるのか
コンサル会社は、プロジェクトに参加するコンサルタントの人数と期間に応じて、お客さまから報酬を受け取るのが一般的です。

コンサルティングファームの種類

ファーム(⁠コンサル会社)は、得意な領域によっておおまかに分けられます。1つのファームが複数の性格を持っていることもあります。

戦略系
経営者と一緒に、会社の方向性や事業の戦略を考えることが中心です。少人数のチームで、短い期間に集中して取り組むことが多いのが特徴です。
総合系
戦略から、業務の改革、ITの導入、組織・人事まで、幅広い領域を手がけます。人数が多く、業界ごと・領域ごとの部門に分かれていることが多いです。
IT系
システムの構想・選定・導入やデジタル化の支援が中心です。ITとビジネスの両方の知識を使います。
シンクタンク系
官公庁向けの調査・政策づくりの支援と、民間企業向けのコンサルの両方を手がけることが多いです。
財務・M&A系
会社の買収・合併や、経営が苦しくなった会社の立て直しなど、お金にかかわる判断を専門知識で支えます。
組織・人事系など
人事制度や組織づくりなど、特定の領域に専門を絞ったファームもあります。

仕事の中身は「⁠どの領域のチームか」で決まる

コンサルタントの仕事の中身は、ファームの看板よりも、どの領域(⁠ソリューション)のチームに入るかで大きく変わります。同じファームでも、戦略のチームとシステム導入のチームでは、毎日の仕事がまったく違います。

反対に、同じ領域のチームどうしであれば、ファームが違っても仕事の進め方や求められる力は大きくは変わりません。

そのため、ファームを比べるより先に、「⁠どの領域の仕事がしたいか」をはっきりさせることが大切です。どんな案件が多いかはチームごとに違うので、応募するチームについては別に確かめる必要があります。

領域(⁠ソリューション)ごとの仕事の中身と、よくある案件は「⁠その2」にまとめています。

役職ごとの仕事と、必要となる能力

偉い人から順に説明します。プロジェクトでは、上の役職の人が方針と責任を持ち、下の役職の人が実務を担います。

上から1番目

パートナー

ほかの呼び方の例:マネジング・ディレクターなど

ファームの共同経営者(⁠役員クラス)です。

主な仕事

  • お客さまの社長・役員と長い信頼関係を築く
  • お客さまの課題を見立てて提案し、案件を受注する
  • プロジェクトの最終的な責任を負う
  • 採用・育成や、どの領域に力を入れるかなど、ファームの経営を担う

何で評価されるか

受注した案件の大きさ、お客さまとの関係の深さ、プロジェクトの品質、部下の育成などで評価されます。

必要となる能力

  • 経営者と対等に議論できる見識と信頼感
  • 業界や領域での評判と人脈
  • お客さまの課題から新しい案件をつくる力
  • 大きな判断を下し、結果に責任を持つ覚悟
  • 大人数の組織を率いる力
上から2番目

ディレクター

ほかの呼び方の例:アソシエイトパートナー、プリンシパルなど

パートナーの一歩手前で、パートナー候補の立場です。

主な仕事

  • 複数のプロジェクトをまとめて統括する
  • 提案活動を主導し、受注にかかわる
  • 特定のテーマや業界の責任者として、ファームの看板を背負う
  • シニアマネージャー・マネージャーを育てる

何で評価されるか

担当するプロジェクト全体の成果と品質に加え、自分の力で案件を取ってくる力がつき始めているかが見られます。

必要となる能力

  • 複数のチームの品質を同時に保つ力
  • 提案を受注につなげる営業の力
  • 専門のテーマで第一人者と呼ばれる知見
  • お客さまの役員クラスとの関係づくり
  • 次の管理職を育てる力
上から3番目

シニアマネージャー

大きなプロジェクト、または複数のプロジェクトの責任者です。

主な仕事

  • 大規模なプロジェクトや、複数のプロジェクトを統括する
  • 提案書をつくり、提案活動の中心を担う
  • お客さまの部長・役員クラスと方針を話し合う
  • マネージャーの相談に乗り、問題が大きくなる前に手を打つ

何で評価されるか

プロジェクトを成功させることに加え、次の案件につなげること(⁠継続・拡大の受注)が強く見られるようになります。

必要となる能力

  • 予算・人員・品質・期限を同時に管理する力
  • 問題を先回りして見つけ、手を打つ力
  • 提案を形にして伝える力
  • お客さまとの交渉と期待値の調整
  • マネージャーを育てる力
上から4番目

マネージャー

ほかの呼び方の例:マネジャー

1つのプロジェクトの現場の責任者です。

主な仕事

  • プロジェクトの計画を立て、進み具合・品質・予算を管理する
  • チームのメンバーに仕事を割り振り、育てる
  • お客さまの担当責任者と日々やり取りし、意思決定を引き出す
  • 成果物(⁠報告書など)を最後に確認し、品質に責任を持つ
  • 課題を整理して、解決の方向を決める

何で評価されるか

プロジェクトを計画どおりに、お客さまの満足と品質を保って終わらせられたか、チームを育てられたかで評価されます。

必要となる能力

  • プロジェクト全体を設計し、段取りを組む力
  • チームを動かし、メンバーの力を引き出す力
  • お客さまや関係者との調整と合意形成
  • 成果物の品質を見極める目
  • うまくいかないときに立て直す力
上から5番目

シニアコンサルタント

ほかの呼び方の例:シニアアソシエイト、シニアなど

現場のリーダーで、マネージャーの右腕です。

主な仕事

  • プロジェクトの中の一つの領域(⁠チームの一部)を任される
  • コンサルタント・アナリストをまとめ、仕事を指導する
  • 自分で論点を立て、分析・資料づくり・会議の進行を主導する
  • マネージャーの代わりにお客さまとやり取りする場面も増える

何で評価されるか

任された範囲を自分の判断で進めきれるか、後輩をまとめて成果を出せるかが見られます。マネージャーに上がる準備ができているかの段階です。

必要となる能力

  • 任された範囲を、指示を待たずに進めきる力
  • 何を明らかにすべきかの論点を立てる力
  • 会議を仕切り、結論を出す力
  • 後輩に教え、仕事を任せる力
  • 得意な領域の深い専門知識
上から6番目

コンサルタント

ほかの呼び方の例:アソシエイトなど

プロジェクトの実務の中心を担う立場です。

主な仕事

  • 担当の作業を、自分で考えて進める
  • お客さまへのヒアリングや打ち合わせを行う
  • 分析を行い、報告資料をつくる
  • お客さまの現場の人と一緒に作業を進める

何で評価されるか

担当した作業の質とスピード、お客さまとの信頼関係、チームへの貢献で評価されます。

必要となる能力

  • 筋道を立てて考える力(⁠論理的思考)
  • 分かりやすい資料をつくる力
  • お客さまの話を聞き、伝える力
  • 期限と品質を守る力
  • 自分から動く主体性
上から7番目

アナリスト

ほかの呼び方の例:ビジネスアナリスト、ジュニアアソシエイトなど

新卒や若手が最初に就くことの多い立場です。

主な仕事

  • 情報を集めて調べる
  • データを整理・分析する
  • 資料の作成を担う
  • 会議の記録や準備など、チームの仕事を支える

何で評価されるか

作業の正確さとスピード、教わったことを吸収して成長しているかで評価されます。

必要となる能力

  • 素直さと吸収の速さ
  • ミスのない正確さ
  • 表計算や資料作成のソフトを使いこなす力
  • こまめな報告・連絡・相談
  • 粘り強く調べきる力

役職の名前と段階の数は、ファームによって違います。上の呼び方は、多くのファームで使われている一般的なものです。中途で入る場合は、これまでの経験と選考での評価に応じて、どの役職から始まるかが決まります。

ファームごとの役職の呼び方(⁠対応表)

同じ段階でも、ファームによって呼び方が違います。各ファームの公式サイトで確認できた呼び方を、上の一般的な段階にあてはめました。

一般的な段階アクセンチュアPwCコンサルティングEYストラテジー・アンド・コンサルティングKPMG FAS(⁠Strategy部門)
パートナーマネジング・ディレクター---
ディレクター-ディレクターアソシエートパートナーディレクター
シニアマネージャーシニア・マネジャーシニアマネージャーシニアマネージャーシニアマネージャー
マネージャーマネジャーマネージャー-マネージャー
シニアコンサルタント-シニアアソシエイトシニアコンサルタントシニアアソシエイト
コンサルタントコンサルタント--アソシエイト
アナリスト---ジュニアアソシエイト

各ファームの公式サイトで確認できた呼び方だけを載せています。空欄は「⁠その段階がない」という意味ではなく、公式サイトで確認できなかったことを示します。左の段階との対応は一般的な目安で、正式な対応関係はファームによって異なります。

年収の決まり方

コンサルティングファームの年収は、多くの場合、役職(⁠ランク)ごとにおおよその幅が決まっています。役職が上がると、年収の幅も上がります。

中途で入るときは、どの役職で入るか、その役職の中のどのあたりで入るかが、選考での評価によって決まります。同じような経歴でも、面接での評価によって入社時の役職や年収が変わることがあります。

つまり、入社時の年収を上げるいちばんの方法は、選考で高い評価を得ることです。

志望動機の組み立て方

コンサルの志望動機は、次の2つで組み立てると、筋の通ったものになります。仕事の中身はファームの違いよりも領域(⁠チーム)の違いで決まるので、「⁠なぜこのファームか」を無理に作り込むより、2つ目の「⁠なぜこの領域か」を固めることが大切です。

① なぜコンサルタントになりたいのか
これまでの仕事や経験の中で感じた課題や思いと、「⁠お客さまの課題を外から解決する」というコンサルの仕事を結びつけます。事業会社の中ではできないこと、コンサルだからこそできることは何かを考えると、理由がはっきりします。
② なぜその領域(⁠ソリューション)なのか
戦略、業務改革、IT導入、人事など、応募する領域を選んだ理由を、自分の経験や強みとつなげて説明します。その領域でどんな課題を解決したいか、自分の経験がどう生きるかまで言えると、説得力が増します。

コンサルの後のキャリア

コンサルで身につけた力を生かして、さまざまな道に進む人がいます。代表的な例です。

事業会社の経営企画・事業企画
コンサルで身につけた、課題を整理して計画をつくる力を、一つの会社の中で生かす道です。
新規事業・DX推進の責任者
新しい事業やデジタル化を、事業会社の側で自ら進める道です。
投資ファンド・投資銀行
会社を分析し、価値を高める経験を、投資の仕事で生かす道です。M&Aや財務の経験が生きやすい分野です。
スタートアップの経営メンバー
事業計画や組織づくりの経験を、成長中の会社の経営で生かす道です。
専門部門の責任者(⁠CIO・CHRO・CFOなど)
IT・人事・財務などの専門領域の経験を、事業会社の責任者として生かす道です。
ほかのファームへの移籍・独立
より専門を深めるためにほかのファームに移る人や、独立・起業する人もいます。

領域ごとの、次のキャリアの例

領域(⁠ソリューション)経験が生きる次のキャリアの例
戦略・新規事業事業会社の経営企画・新規事業の責任者、投資ファンド、スタートアップの経営メンバー、起業
業務改革事業会社の業務改革・DX推進の部門、経営企画、部門の責任者(⁠オペレーションの管理職)
IT導入・システム刷新事業会社のIT部門の責任者・CIO、大規模プロジェクトのプロジェクトマネージャー、ITコンサルの専門家としての昇進
DX・デジタル・AI事業会社のDX・デジタル部門、プロダクトマネージャー、スタートアップの事業責任者
組織・人事事業会社の人事企画・CHRO(⁠人事の責任者)、人材開発・組織開発の責任者、人事領域の専門家
M&A・財務・事業再生投資銀行・投資ファンド、事業会社のM&A部門・経営企画、CFO(⁠財務の責任者)
リスク・規制対応事業会社のリスク管理・内部監査の責任者、法務・コンプライアンス部門、セキュリティの責任者
サステナビリティ(⁠脱炭素など)事業会社のサステナビリティ部門、エネルギー・環境系の事業会社、新規事業の責任者

よくある質問

未経験でもコンサルタントになれますか?
なれます。新卒採用のほか、中途採用でも、業界の知識や、業務・ITなどの実務経験を生かして入る人がたくさんいます。どの経験が、どの領域で生きるかを整理することが大切です。
ファームによって、仕事の中身は違いますか?
大きな違いは、ファームよりも、どの領域のチームに入るかで生まれます。同じファームの中でも、チームによってやることは大きく違います。
文系でも大丈夫ですか?
大丈夫です。文系・理系を問わず活躍している人がいます。IT導入やデータ分析の領域でも、文系出身の人は珍しくありません。
プログラミングはできないといけませんか?
多くの領域では必須ではありません。ただし、IT・デジタル系の仕事では、システムの仕組みを理解していると役に立ちます。
英語は必要ですか?
ファームや案件によります。海外の拠点や外国の会社がかかわる案件では、英語を使うことがあります。
仕事は忙しいですか?
プロジェクトの時期や内容によって大きく変わります。働き方の見直しを進めているファームも多いので、気になる点は選考の中で確かめましょう。

用語集

クライアント
コンサルの仕事を依頼するお客さま(⁠会社や官公庁)。
プロジェクト
目的と期間を決めて、チームで進める仕事のまとまり。
ソリューション
コンサルが「⁠何を手伝うか」の領域(⁠戦略、業務改革、IT導入など)。
インダストリー
コンサルが「⁠どの業界を手伝うか」の区分(⁠金融、製造、公共など)。
PMO
プロジェクト全体の進み具合・課題・リスクを管理する役割・組織。
DX
デジタル技術とデータを使って、事業や仕事のやり方を変えること。
ERP
会計・販売・購買・人事などの業務をまとめて管理するシステム。
要件定義
システムに何をさせるかを具体的に決める工程。
デューデリジェンス
買収や投資の前に、相手の会社の財務・事業・法務などを詳しく調べること。
PMI
M&Aの後に、2つの会社の組織・業務・システムを一つにまとめていくこと。
PoC
本格的に取り組む前に、効果や実現できるかを小さく試すこと。

業界・領域・役職の説明は一般的な整理で、すべてのファーム・会社に当てはまるわけではありません。案件の例と役職の呼び方は、各ファームの公式サイトで公開されている情報をもとにしています(⁠確認日:2026年10月6日)。社名・サービス名は各社の商標または登録商標です。